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広島家庭裁判所 事件番号不詳 審判

主文

1  相手方は、申立人に対し、金855,000円を支払え。

2  相手方は、申立人に対し、平成4年3月から当事者の離婚又は別居状態の解消まで、毎月末日限り金16万円を支払え。

理由

(申立ての趣旨)

相手方は、申立人に対し、婚姻費用として毎月金25万円を支払え。

(当裁判所の判断)

1  紛争の経過

本件記録(当庁平成元年(家イ)第207号離婚調停事件記録を含む)によれば、次の事実が認められる。

(1)  申立人は、昭和51年5月、相手方と挙式(婚姻届は、相手方が帰化手続きを終えた後の昭和53年10月26日になされた)のうえ、同居し、二人の間に長女春子(昭和52年3月18日生)をもうけた。

(2)  相手方は、広島市内の高校を卒業し、○○大学に進み、3年生のとき、当時○×音楽短期大学付属高校を出て、同短大に学んでいた申立人(東京都出身、父親は、袋物製造卸業)と知り合った。二人は、挙式後、神戸で生活を始め、相手方は、中華料理店「○×○」で働いていたが、昭和52年10月、母親の経営している株式会社○○飯店(中華料理店で、代表取締役甲野月子、以下「○○飯店」という)を継ぐため、広島に転居した。

(3)  相手方は、「○○飯店」の取締役として勤務していたが、次第に生活が派手になり、外車を購入したり、他の女性と交際したりするようになった。他方、申立人は、結婚当初から、何かあると実家に帰りたいということが多く(妊娠中、精神的に不安定になった時期があった)、相手方は、そうした申立人の態度に困惑し、申立人についていけない面を感じることがしばしばであった。

(4)  昭和60年ころ、相手方は、仕事上の都合と称して、広島市内の××にマンションを借りて、転居し、生活費として月額約22万から23万円を申立人に送金していた。しかし、相手方は、××に別居してからファッションクラブの特定の女性と男女関係を結んでいた。

(5)  その後、申立人と相手方は、生活をやり直そうとして、昭和62年10月、広島市内の○○○にマンションを借り、同居を始めたが、相手方は、広島市内の△△△にマンションを借りて、仕事を口実に帰宅しないことが多くなつた。

(6)  昭和63年1月2日、申立人は、些細なこと(可愛がっていた犬猫のこと)から、長女春子との間に仲裁に入った相手方と言い合いとなり、相手方は、申立人と別れる以外にないと判断して、△△△のマンションに移り、以後完全な別居生活となった。

(7)  平成元年3月、相手方は、申立人と性格が合わない、同人の浪費、異常性格(ヒステリー)などを理由として、当裁判所に離婚の調停を申立てたが、同年10月31日不成立となった。その後、平成2年8月28日、申立人から婚姻費用分担の調停申立てがなされたが、これも不成立に終わった。

なお、相手方は、平成2年9月、申立人を相手として離婚訴訟を提起し、現在、広島地方裁判所に係属審理中である。

2  当事者の生活状況

本件記録によれば、次の事実が認められる。

(1)  申立人は、相手方と別居後、相手方の母親甲野月子から毎月25万円の送金を受けていたが、平成2年6月から毎月8万円の送金を受けている。このほか春子が祖母甲野月子から、塾代として月平均約35,000円の送金を受けている。

申立人は、「○○飯店」の手伝いをしていたが、店を辞めるようにいわれ、また子供のこともあり、昭和63年9月以降仕事に就いていない。現在の住居である○△マンション(3LDK)は、「○○飯店」が賃借しており、申立人は、家賃月額135,000円を負担していない。長女春子は、中学3年生であるが、登校拒否等の問題行動があり、現在、東京の申立人の母親丙野夏子の許で生活し、進学を目指している。

(2)  相手方は、昭和61年ころから、「□□」(音楽家派遣、イベント関係)、昭和63年12月ころから、○○○開発株式会社(地域開発に関する調査、企画及び設計等)の経営(代表取締役)をしているほか、母親が代表取締役をしている「○○飯店」及び○○興産株式会社(不動産の売買賃貸等の取引)の取締役でもある。

相手方の収入は、名目で月額80万円(○○○開発40万円、□□20万円、○○飯店15万円、○○興産5万円)である。

しかし、他方相手方は、三菱銀行から、<1>手形貸付で200万円、証書貸付で19,676,294円(マンション購入資金、但し、マンションは既に処分し、借金だけ残っている)、○○○開発から22,143,243円、□□から1,617,226円、○○飯店から33,055,485円をそれぞれ借入しており、それを会社の運営費だけでなく、生活費にも当てており、先の収入も、これら借入先への利息等の返済に充当され、収入のうち幾らが生活費に回されているかを確定することは本人自身もできないのが実情(形のうえでは、先の収入は、○○興産の5万円を除き、そっくり返済に回されるようになっている)である。

3  夫婦別居の原因及びその責任

上記1認定事実を総合すると、相手方には過去において、女性関係があり、それが申立人に対する関係で不貞行為に当たることは明らかであるが、相手方にとって、家庭が落ち着ける場所でなかったことも事実であり、その責任の一端は、申立人にもあるといえる。ともあれ、今や夫婦関係は、破綻していると見るべきで、このことは婚姻費用を決めるに当たって考慮されるべきである。

4  分担額の検討

(1)  上記認定の事実を総合すると、申立人と相手方とは別居している夫婦であるが、上記のような別居に至った事情、別居後の状況等に鑑みると、相手方は、申立人に対し、長女の養育費として、相手方の社会的地位、収入に相応した生活を保持するいわゆる生活保持の義務があり、また、申立人に対する関係でも生活扶助の程度の分担義務があるものというべきである。

(2)  その分担額を決めるに当たっては、次のような方式により算出した負担額を参考にすべきである。

まず、実費方式によるのは、既に夫婦関係が破綻していることからすると妥当性を欠くと考えられる。他方、本件のように相手方が事業経営者であると、事業資金等で多額の負債を抱えている場合が多く、これを基礎にしたのでは、生活費の負担額が出てこない、そこで、先ず一般的な家庭における生活費を算定の基準とし、これに長女に対する扶養義務を加味して修正することとする。

広島市における費目別、世帯人員別標準生計費は、

3人世帯の場合 215,620円である。

(これは、相手方の収入80万円のうち約20%が消費支出に回せるものとみる見方と符合する)

A)最低生活費から算出した分担額

ア 当事者の最低生活費についてみると

第1類  相手方(38歳) 34,840円

申立人(36歳) 34,840円

長女(15歳)  41,230円

第2類             44,270円

教育扶助 長女(中学生)     3,680円

以上合計        158,860円

イ 最低生活費に占める申立人側の割合

第2類で世帯人員が2人増えたために加算される金額は、

44,270円-36,080円=8,190円

申立人側の占める割合は、

(34,840円+41,230円+8,190円)÷158,860円=0.53

ウ 標準生計費に占める申立人側の生活費

215,620円×0.53=114,000円(千円未満四捨五入)

B)総合消費単位により算出した分担額

消費単位………………相手方125、申立人80、長女80

総合消費単位に占める申立人側の割合は

(80+80)÷(125+80+80)=0.56

標準生計費に占める申立人側の生活費は

215,620円×0.56=121,000円

(3)  上記A)及びB)の算出にかかる金額を参考とし、特に、長女に対する扶養義務を考えると、長女の塾代として渡されていた月額約35,000円程度の金額は、長女が進学する場合は勿論、そうでない場合でも、相手方の生活程度を考えれば、これを加算するのが相当であり、その他、当事者間の一切の事情を勘案すれば、相手方が長女の養育費を含む婚姻費用の分担として申立人に対して負担すべき金額は、月額金16万円と定め、分担義務の始期については本件申立てに至る経緯を考慮し、申立人が確定的に請求の意思を表明するに至った本件調停の申立時、即ち平成2年8月とするのが相当である。

5  結論

以上のとおりであるから、相手方は、申立人に対し、養育費を含む婚姻費用の分担金として、金855,000円(既払分月額115,000円の19か月分は控除)と、平成4年3月から当事者の離婚又は別居状態の解消まで、毎月末日限り金16万円を支払う義務がある。

よって、主文のとおり審判する。

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